明日は面接。頑張る。

何とか嫌がらせのように企業に電話をかけまくった結果が実ったな。口はほどほど上手いと言うかデタラメや作り話を丁寧に悪びれる様子もなく言えるのが武器といえば武器。

取り敢えず会ってみるってのも悪くない方法だしね。

精一杯、卑屈さを隠して会話をしてやる。まず、雑談から入って雑談が好きな奴かどうかを探る。

大きく分けて雑談なんて興味なく、早く面接のテンプレに行きたいと思うタイプと雑談から採用を決めるタイプが居るが明日はどうなんだろ。

電話マニュアルの次は面接マニュアルも作らきゃ、今日はもうしらふじゃないから作れんが

今後、コンゴ

出たとこ勝負で明日頑張るか。猫背にならず、目をがっと開いてはっきりした口調でゆっくり丁寧に。

相手の質問の内容を素早く受け取って正しい返答をする。

よし、頑張るぞ。おれは金が欲しいんだ。仕事が欲しいんだ。



澪ちゃん「でも、貴方はこういう時いつだって失敗する。」

おれ「は…っ はぅあ!!」

おれ「て、てめぇは…!」

澪ちゃん「まっこり✩」

おれ「…っ!澪ちゃん…!」

澪ちゃん「そうさ、いつだって貴方はこういう時に失敗する。いや、怖気づいて自ら失敗を選ぼうとする。

自分の才能の無さ、価値の無さを目の当たりにしたくないから道化を演じて人道から外れた事をわざとする。

学歴がないから、職歴がないから、つまらないから、社会に必要とされてないから、だからわざと失敗をする。してきた。

今回もそうでしょ?就職が出来なかったから、こんな誰も見ていないブログでネタを交えて自分の駄目さ加減を綴ってるんでしょ?」

おれ「…黙れ。」

澪ちゃん「こんな事、もう何年続けてるの?去年の今頃も、2年前だって、いや、それ以上。ずっと貴方はパソコンの前にいるだけじゃない。」

おれ「…黙れ。おれだって去年のバイトで…」

やっと見つけた高収入のバイトで小金を持って自信がついた?でも、貴方は少しばかりのお金を手にしても根本的には変わらなかった。せっかくのバイトも何かと理由をつけて逃げだした。

おれ「あのバイトは絶対に長く続かないんだよ。内容自体でたらめな仕事だったし、高収入の裏にはリスクもあって、そのリスクを回避するためにおれは…」

澪ちゃん「無職になった。」

おれ「…。」

澪ちゃん「リスクなんかどんな仕事でも、誰にだって存在するものでしょ?そりゃリスクから逃げ続ければ気楽でいいわよね。また自宅に引きこもって、他人を締め出し、大好きなパソコンをいじってれば貴方はリスクを回避した頭の回る人物だわ。」

澪ちゃん「でも、それで?」

澪ちゃん「貴方が生きている意味は?」

おれ「…黙れよ。顔面に一発喰らいたいか…?」

澪ちゃん「ねぇ、貴方が生きている意味は?」

おれ「黙れ…黙れ…」

澪ちゃん「もう夢を追うことすら手遅れってわかってるでしょ?というか貴方には最初から夢なんか無かった。」

澪ちゃん「自分の生きる意味や夢を持ってない時点で貴方は誰よりも劣っているわ。」

おれ「… …。」

澪ちゃん「何とか言い返してみなさいよ。この私を言い負かせるだけのセンスある言い返しをしてみなさいよ。」

おれ「…。」

おれ「…うるせぇ、服を着ろ。」





気が付くと全裸の澪ちゃんはもう居なかった。

部屋は薄暗く、外は恐ろしく静かで、世界に自分しか居ないと錯覚させるような小雨が降っていた。

机は粉っぽく、ピルカッターの刃で切ってしまった親指の先が、しくしく痛かった。

いつまでもいつまでも、痛かった。

最後の最後でここまで哀れな自分の事が気の毒に思えてきた。

湿気を含んだ、安いリクルートスーツが吊るされているのをそっと見る。

明日は面接である。