岩倉高校軽音楽部 6月12日
冬子「おいっす、昨日のうたばん見た?」ガチャ!
後輩「こんちは、カミスンなら見たっす」
冬子「そっかぁ」
『6月12日(水) PM5:12』
後輩「3時間ほど遅刻っすね。もう俺帰るっすけど・・・」
冬子「まあ、待ちたまえよ。ジムノペティの歌詞付き音源聞きたくない?」
後輩「・・・作詞は誰っすか?」
冬子「あたしだが。」
後輩「鍵閉めといてくださいっすね」スッ
冬子「まあ、まあ、待ちたまえよ。じゃあ、ジムノペティの第四番聞きたくない?」
後輩「・・・主題は何っすか?」
冬子「『ゆっくりやらしく』」
後輩「空調切っといてくださいっすね」スッ
冬子「と、まあ仕込んできたネタはここまでだね。さて、一度座ろうか」
後輩「もうNARUTO疾風伝始まっちゃうっすから・・・本当に・・・」
冬子「ええがな。小僧、最近どんな曲聴くんだ?」
後輩「はぁ…最近はラヴェルとか」
冬子「ラヴェルwwww」
後輩「消失からエリック・サティに入ったあんたに笑われたくねぇよ」
冬子「あら、あたしはニトリのCMから入ったわよ」
後輩「尚、悪いっすね」
冬子「小僧だってフリクリからpillowsに入ってるじゃん」
後輩「the pillowsな」
冬子「どーでもいいわ」
後輩「じゃあ、さようなら」スッ
冬子「ほらほら、ほーらほらっ」
後輩「なんっすか・・・ちょ、触んないでくださいよ」
冬子「え、こんな可愛い先輩を置いて家帰っちゃうの?どうしたの?」
後輩「そんな可愛い先輩をぶっ殺してから家に帰る事もできますけど・・・」
冬子「えっ/// か・・・可愛い・・・って・・・」
後輩「(うわーめんどくさい事になったー)」
冬子「あ・・・あのさっ・・・小僧はさ・・・っやっぱりあたしの事・・・」
後輩「じゃあ、練習しましょう。そうだ、練習しなくちゃ。一応軽音部なんだし」
冬子「えっ。あぁ・・・そ、だね・・・うん」
後輩「そうっすよ。桜ヶ丘学園軽音部ですらもっと練習してますよ。」
冬子「そ・・・そうだよね!こんなんじゃあたし達卒業旅行でロンドン行けないよね!」
後輩「じゃあ、アンプ繋いでください」
冬子「アンプ・・・?小僧、夢でも見てるのか?」
後輩「あー、そうだった。この部室アンプねぇーんだった・・・」
後輩「つーかぁ、楽器すらねぇ・・・」
冬子「・・・あたしバイトとかできそうにないから」
後輩「(プッツゥン)」
冬子「小僧、小僧。物事を平面的に捉えるな、考え方次第でロックンロールなんていくらでもできるぞ」
後輩「つーか、楽器もない、ギターも弾けないのに何で軽音楽部なんて作ったんっすか、部長。」
冬子「ろっくんろぉうるがしたかったんだなぁ・・・」
後輩「ロックって・・・この状況のどこがロックなんっすか」
冬子「ロックじゃないかよ。反社会的で」
後輩「部長、生徒会の仕事しっかりやってるじゃないっすか・・・」
冬子「あれは・・・内部からこの学園をぶっ潰してやろうと・・・」
後輩「スザクみたいなこと言わないでくださいよ・・・」
冬子「とにかく、これがあたしのロックなの!この状況があたしのロック完全体!」
後輩「・・・つーか、部長にとっての『ロック』ってなんっすか?」
冬子「おい、小僧。お寿司が落ちてるぞ」
後輩「話逸らさないでください。引っかからないっすよ」
冬子「まあ〜あれだ。うん、あれ。えーと、あれさね」
後輩「アレ?」
冬子「ロックンロールやってる奴は2種類しか居ないんだよ。」
後輩「ほぅ」
冬子「『ちんぽ』って書かれたTシャツ来てギター弾いてる奴か『ちんぽ』って刺青を胸に入れてる奴か」
後輩「なるほど・・・!全然わからない。つーかあんた馬鹿だろ」
冬子「馬鹿ではない」
後輩「女子がちんぽとか言ってると都知事に怒られますよ?」
冬子「つまりだな。『ちんぽ』と書かれたTシャツは飽きればすぐに脱ぎ捨てられる。言わばファッションなんだよ」
後輩「・・・」
冬子「よし、わかった。ちんぽじゃなくって『ロックンロール』の文字のTシャツと刺青にしょう。初心者向けに特別な」
冬子「ロックンロールと書かれたTシャツを着てギター弾いてる奴はロックをファッションとして着てるだけなんだ。その点、ロックンロールの刺青した奴は一生ロックの呪縛からは離れられない。嫌でもロックの文字と一生付き合う事になる。」
後輩「・・・」
冬子「あたしは、2年前のあの雨の日・・・母親が出て行ったあの日に、ロックンロールって文字をこの胸に刻んだんだ。」
冬子「だから、あたしは行きながらにしてそれ全てがロックなのさ。正規品のTシャツなんか着ちゃいねぇ・・・」
後輩「・・・あ、ごめんなさい、聞いてませんでした。で、部長にとってロックってなんなんっすか?」
冬子「・・・目立つことだな」